美術館連絡協議会 美術館連絡協議会

  • 画人・富岡鉄斎展会場風景。碧南での調査によって発見された三福対は58年ぶりの公開となった。
  • 山本富章展・蔵ギャラリー外観。作家が歴史的建造物の中での展示を希望し、学芸担当や行政職員が所有者と協議を重ねて実現した。
  • 進行中の渡辺英司によるプロジェクトでは美術館近くにあるガソリンスタンド跡をギャラリー及びワークスペースにし、休館からリニューアル後の活動拠点の一つとする予定

2020.6.5(fri)

地域を活かす
地域に生きる美術館
【碧南市藤井達吉現代美術館】

碧南市藤井達吉現代美術館学芸員 大長悠子



 碧南市藤井達吉現代美術館は、多くの寺が林立し古い港町としての歴史を持つ市内・大浜地区に建っている。まちづくりの一環として美術館建設が進められたという経緯から、2008年の開館当初より地域に根差した美術館としての意義を強く意識して活動してきた。

 例えば活動方針の一つである「地域の歴史と文化に焦点をあてた調査・研究活動」。2013年度の画人・富岡鉄斎展の開催及び石川三碧コレクションの受贈は、地道な調査研究を土台に当館が近隣企業との関わりを深めてきたことが、地域に眠る文化財を掘り起こし、質の高い作品収集に結実したものである。碧南市史をもとに鉄斎関連の調査を進めるなかで、当館近くに本社工場を擁する九重味淋株式会社の明治・大正期の当主、石川三碧が直接鉄斎と交流していたことが分かり、現在まで受け継ぐ文化財を一括して当館で調査させていただくことになったのである。最終的に、50年以上所在不明であった鉄斎の晩年の代表作を発見、これらの作品をはじめ103点をご寄贈いただくこととなった。

 さらに、その中には藤原定家の《明月記断簡》や室町時代の絵巻《てこくま物語》といった大変貴重なものが含まれていることも後の研究により判明したのである。現在も良好な関係を築き、駐車場の一時的な使用や直売所・レストランの定休日を美術館の休館日に合わせる等のご協力もいただいている。

 また、現代美術館として現存作家とともに地域の歴史に基づく活動も実施、計画している。2016年度に開催した現代作家の山本富章展では、館内展示と同時に美術館からほど近い、大正末期から昭和初期に建てられた蔵を活用してインスタレーション展示を行った。蔵での展示は作品を新鮮に見せるとともに、まちの人にとっては当たり前の風景であった100年前の蔵の見え方を変容させ、改めて土地の記憶を意識させることとなった。

 アートやアーティストの視点が地域の埋もれた歴史や固有性を照らし出し、私たちが今体感できる魅力を放つものに変貌させる。まちの過去と現在をアートでつなぐことは、近代工芸の先駆者であった藤井達吉という地元作家を館名に据えつつ現代美術館を標榜する当館に相応しいことではないかと考える。現在、当館は施設の増設工事のため長期休館中であるが、リニューアルオープン時にはこの地域の歴史や課題を題材にイケムラレイコや渡辺英司、占部史人などの現代作家とともにアートをまちの隙間に介在させる試みを計画している。

 地道な調査研究活動や近隣企業・団体との関係を温めていくとともに、この地域の独自性に光を当て、そこに集まる人の創造性をアートで呼び起こすこと。地域の美術館である当館が、今後より積極的にその拠点としての役割を担っていくことが課題だと感じている。

美連協ニュース146号[2020年5月号]より転載
(※役職、所属は掲載時)

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