美術館連絡協議会 美術館連絡協議会

  • 青森県立美術館外観 入口上のネオンサインは、art,aomor iの頭文字aから発想された青い木 のようなシンボルマークが集まって“アートの青い森”として広がっていくことを象徴している。 青森県立美術館外観

    入口上のネオンサインは、art,aomor iの頭文字aから発想された青い木 のようなシンボルマークが集まって“アートの青い森”として広がっていくことを象徴している。
  • 大小島真木+アグロス・アートプロジェクト《明日の収穫》2017-18 年度に開催された《アグロス・アートプロジェクト》で地元の参 加者とアーティストにより制作された。青森EARTH2019の出品作品。 大小島真木+アグロス・アートプロジェクト《明日の収穫》

    2017-18 年度に開催された《アグロス・アートプロジェクト》で地元の参 加者とアーティストにより制作された。青森EARTH2019の出品作品。

2019.12.9(mon)

地域とつながる美術館
【青森県立美術館】

青森県立美術館 美術企画課長 池田 亨



 青森県立美術館は、ミッションの一つとして「青森県の豊かな芸術風土や隣接する三内丸山遺跡に埋蔵された縄文のエネルギーを芸術創造の源泉として捉えながら、強烈な個性を有する青森県のアーティストたちの原風景を探求し、青森県の芸術風土を世界に向けて発信する」ことを掲げている。徹底的に地域の特質、ローカリティにこだわりながら、活動を行っていくという姿勢は、準備段階から一貫して守り続けてきた青森県立美術館のポリシーである。

 これをふまえ、2006年の開館以来、継続的に地域をテーマとする企画展示やアートプロジェクトが実施されてきた。美術館が縄文遺跡に隣接することから企画され、青森および東日本の出土遺物と現代アートで構成した「縄文と現代」展(2006)、東山魁夷の『道』の取材地でしられる八戸市の名勝地、種差海岸の三陸復興国立公園指定を機に、地域と芸術の関係を考察し、地域の記憶を次代につなぐ現代アートの可能性を探求した「種差-よみがえれ 浜の記憶」展(2013)はその代表的な例である。後者では、考古・民俗資料や、種差に取材した近世から近代の美術を展示するとともに、招聘した英国のアーティスト、リチャード・ロングが種差海岸を歩いての制作を行なうなど、あらためてこの地の持つアートをインスパイアする力を引き出すことを試みた。

 近年は「縄文に創造の原点をたずね、青森の大地に根ざした新たなアートを探求していく」という企画シリーズ「青森EARTH」を展開している。「青森EARTH2015 みちの奥へ」は北海道新幹線開業を前に、本州最北端の新幹線駅のある津軽半島をフィールドに実施。写真家の石川直樹と参加者は津軽半島で撮った写真をもとに太宰治の小説『魚服記』をモチーフに展覧会をつくるワークショップを、アーティストの鴻池朋子は、参加者の記憶にもとづく物語をテーマにした手芸作品を制作する「物語るテーブルランナー/青森編」を、サウンドデザイナー/ディレクターの森永泰弘は青森を舞台にした謡曲『善知鳥(うとう)』の伝説をイメージした音を参加者が採集し、音から物語を構成するワークショップを行なった。これらの県内各地域でのプロジェクトは、各地の自治体や施設、ボランティアの協力を得ながら、アートを通じて見いだしたそれぞれの地域の魅力や可能性を美術館から発信していく試みである。そして今年開催の「青森EARTH2019:いのち耕す場所―農業がひらくアートの未来」(2019年10月5日~12月1日)では、青森県の農業の現場を取材して制作された現代アート作品や、八戸ゆかりの農の思想家安藤昌益の仕事、農業をテーマとした共同制作による作品等、ジャンル横断的に紹介。地域の人々の生活とアートが美術館を通じてどのように関わることができるかを考えようとする企画展である。

 地域独自の風土から生まれた芸術を発掘・紹介し、地域に触発された新たなアートの誕生を促すこうした活動は、県出身作家を中核とする常設展や、青木淳設計の縄文遺跡の発掘現場に想を得た建築、奈良美智の「あおもり犬」などのコミッションワークとともに、青森県立美術館の独自の魅力として、美術館を所管する県の観光国際戦略局との密接な連携のもと、観光における重要なコンテンツとして発信され、地域へと還元されている。ローカリティへのこだわりと観光との連携は青森県立美術館の地域への関わり方の特徴である。

 また、青森県内には、アーティスト・イン・レジデンスの施設として実績を重ねてきた国際芸術センター青森や、アートによるまちづくりで大きな成果をあげている十和田市現代美術館があり、2020年には弘前れんが倉庫美術館、2021年には八戸市新美術館(仮)と、アートを通じた地域の活性化をはかる新たな施設が開館する。各地域を担うこれらの館と連携を深め、県全域をつなぎつつアートを通じた地域の新たな可能性を切り開いていくことが青森県立美術館の次なる課題である。

美連協ニュース144号[2019年11月号]より転載
(※役職、所属は掲載時)

TAGS タグ TAGS タグ

美術館連絡協議会の活動は、
ライオン、 大日本印刷、損保ジャパンの
ご協賛をいただいております。