美術館連絡協議会 美術館連絡協議会

  • 「神田日勝と十勝の画家たち」展(2018年)
  • 「FACE/わたしとあなた」展(2017年)
    帯広美術館振興会の作家の方々による展示解説
  • 「大正ロマン 昭和モダン」展(2014年)
    帯広美術館振興会と実行委員会により開催された

2020.2.21(fri)

自主独自の風土と美術館
【北海道立帯広美術館】

北海道立帯広美術館 学芸課長 福地大輔



 2019年の春夏に話題を呼んだNHK連続テレビ小説「なつぞら」は、前半の主な舞台を北海道の十勝平野としたドラマであった。劇中で主人公なつが淡い恋心を寄せた相手で吉沢亮演じる山田天陽にはモデルとなった夭折の画家が実在した。その名は、神田日勝(1937~70年)である。

 日勝は十勝の開拓農家の暮らしの中で画業を歩み始め、独立美術協会を活動の場に30歳で会友となった。暮らしの中で培われたリアリズムを志向し、将来を嘱望されるも32歳の短い生涯を閉じたが、没後50年近くを経た現在では北海道美術史の主要な作家のひとりとして位置づけられている。彼の故郷である帯広近郊の鹿追町に建つ神田日勝記念美術館は、「なつぞら」効果で今年度は開館以来の入館者数を数え注目を浴びているが、ここ北海道立帯広美術館でも、油彩作品4点を所蔵している。

 ところで、日勝の没年から帯広美術館の開館まで21年、神田日勝記念美術館の開館まで23年の隔たりが存在する。その間の歳月、日勝の作品と記憶が受け継がれたのは、地域の人々の尽力によるものであった。日勝の作家活動自体も、地域での活発な美術活動の歴史なしには成立し得ないものだったであろう。昭和初期に地域の美術団体、平原社が結成され、作家たちが他に所属する東京や札幌の公募展団体の枠を超えて、皆が地域で切磋琢磨する環境が作られた。日勝も、平原社展で画家としてデビューしている。高等美術教育を受ける機会のなかった彼が、この団体で自己の表現の探求を続けることが出来たことで、作家としての成長に大きく資するところがあったことは疑いがない。

 こうした過去を知る方々が結成し、帯広への道立美術館の誘致、建設運動において大きな役割を果たしたのが美術館誘致促進期成会であった(1988年からは美術館建設協力会)。建設協力会が購入した作品の寄贈は、当館開館当初のコレクションの礎となっている。

 美術館の開館後に建設協力会は帯広美術館振興会と改称し、引き続き地域の作家や経済界の代表者が連なり、当館に向け有形無形様々の支援を継続している。振興会の購入による作品寄贈に加え、美術館と同会の実行委員会による特別展は現在に至るまで継続し、自治体の公立美術館として、特別展を開催する事業予算の十分な確保が困難な現状において、同会の助力は大変心強いものである。

 また、美術館の普及事業として技法入門的な制作体験事業やワークショップを行う時は講師や制作補助に加わり、作り手の観点からの作品解説を多く開催するなど、現在も振興会の事業は、美術館の活動の一翼を担い、当館にとってなくてはならない存在だ。

 もちろん地域の作家たちのエネルギーは館活動への援助のみならず旺盛な制作、発表活動にも向けられている。90年代以降は、現代作家による野外展「帯広の森アートキャンプ」(1997年)に端を発し数々の「環境アート」プロジェクトが2000年代以降まで実施された。また、芹沢高志氏をディレクターに迎えて開催した国際展「とかち現代アート展 デメーテル」(2002年)や、帯広とその周辺の各所を会場にアートと社会の接点を探り、表現の形態を模索し発信を行った「帯広コンテンポラリーアート」(2011~2018年、5回開催)など、神田日勝が活動した時代から現代に至るまで、人口30万人台で推移する十勝地域の人口規模に比して、活発な活動が展開されている。

 そうした地域の美術環境に呼応して、当館でも1998年から2007年にかけて地域の現代作家の個展として開催を続けた「十勝の新時代」展シリーズを始め、その後も断続的に地域で活動中の作家をとりあげた事業を続け、昨年度には特別展「神田日勝と道東の画家たち」、「岡沼淳一 木彫の世界」が開催された。

 このように帯広美術館の活動は、優れた作品を鑑賞する機会をつくり、地域に遺すことを目指し活動してきた十勝の自主独立の気風に大いに助けられてきた道のりでもあった。帯広美術館の開館から約30年、神田日勝の没後半世紀を迎えようとしている今日、美術館は先人の記憶と芸術への強い思いを受け継ぎ、地域の絆を新たにする時期にさしかかっている。

美連協ニュース145号[2020年2月号]より転載
(※役職、所属は掲載時)

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